新製品開発における「落とし穴」

新製品発売後の売上が期待通りにいかないときに、調査方法や調査結果の分析に問題があったのでは?との批判がままあります。

何故調査は予測をはずすのか?の原因系を新製品プロセス過程(下図参照)に沿って考えてみたいと思います。

まず、新製品開発のプロセスが確立されていて、そのプロセスごとに調査のプロトコル(標準化)が出来ているか?です。各ステージで調査のプロトコルが決まっていれば、ケースやノームを蓄積でき、成功事例とそうでない場合のトレースが可能になり予測の精度は上がっていく筈です。ここでいう調査のプロトコルとは、調査デザイン、質問順序、質問項目、ワーディング、評価尺度、コンセプトのフォーマットなどのことです。そして、各ステージでゲート(アクション・スタンダード)をクリアしなければ、開発の次のステップへ進めないシステムをつくることです。(ステージゲートのコンセプト)

新製品開発プロセスとリサーチの寄与

新製品の開発初期で予測をはずさないために特に大事なことは、

1.新製品のアイデアは、消費者インサイトに基づいているか?

たとえシーズ先行型の開発であっても、それが消費者のインサイトと結びつかないと消費者ニーズに転換できず、成功商品にはなりません。消費者インサイトといったときに、カテゴリーやブランドに関するインサイトに短絡しがちですが、ヒューマンインサイト、時代背景のインサイトも重要です。(詳しくは第2回を参照してください)

2.製品コンセプトのマーケッタビリティ(=ターゲットの大きさ=母集団の大きさ)が開発当初から意識されているか?

たとえば、コンセプトの評価はターゲット=母集団の範囲を狭めれば、高くなりノームをクリアしたように見えるかもしれません。

3.新製品の競合関係を狭いカテゴリー内に絞りすぎていないか?

新製品と同じニーズやオケイジョンで使われるものは、カテゴリー外のものでも、将来競合になり得ます。

4.コンセプトはオーバープロミスしていないか?

コンセプトの内容は、発売当初に消費者が受け取れる程度のコミュニケーションの量と質であるべきです。

新製品の開発後期では、予測を外す原因系も多岐に、かつより複雑になります。
新製品のGo/No goを決めるコンセプト+プロダクトテスト(C+Pテスト)のステージ及び広告開発のステージでは上記の他に、次のようなことが問題になります。

1.調査デザインとして、競合条件が加味されているか?

テスト品のコンセプトとプロダクトだけを呈示して消費者の評価をとるのではなく、お店に並んだときの状態を意識して、調査デザインを設計する必要があります。(調査対象者には、少なくとも競合銘柄を意識してもらって、購入意向を質問したい)

2.製品に関しては、その「価格だけの価値=バリュー感」をわかってもらえるような調査デザインになっているか?

試用量、試用期間が十分であること。食品であればいくつかのレシピを試したり、作る人・食べる人の意見などを加味した評価が必要です。特に需要予測には使用頻度(=購入頻度)の予測精度を高めることが大事だからです。発売後1年以内の需要の8割はリピート購買から来るといわれています。

3.広告開発プロセスが用意されていて、常に一定水準以上のインパクトのある広告の制作ができているか?

特に完成広告の評価のステージでは、発売スケジュールやオンエアのスケジュールが決まっていて、広告の制作がぎりぎりになり、調査がスキップされることもあるようです。また新製品開発のプロセスから広告開発ははずされていることもあるようです。C+Pテストまででは、4Pのうちの1つしかチェックされていません。(価格は一応C+Pテストではカバーされてはいますが・・・)

広告開発のあと、新製品発売に至るまでの様々な「落とし穴」を列挙すると、次のとおりです。

  • 調査で使ったプロトタイプ製品と工場生産製品の品質・容量等が違う。(同じ製品スペックでも微妙に味は違うようです)
  • 製造コストや素材調達の問題で、テスト品を上市段階で消費者調査なしに変更する。(社内のテストでは不十分です)
  • C+Pテストのときの価格設定と上市時の価格が違う。
  • 広告のインパクト(ブランド・訴求点のコミュニケーション)が弱い。特にライン拡張の場合、新製品の訴求力が弱くなりがちです。一方C+Pテストではライン拡張、カテゴリー拡張の場合、購入意向は高くなりがちです。親ブランドとの差別化(目新しさ、使用機会等々)が十分でないと期待された売上は達成できません。
  • 投下したGRPが消費者の認知、興味を引く閾値レベルに達していない。
  • 配荷のクオリティ・・・目標の配荷率を達成できない、フェイスが取れない、パッケージが目立たない、など。
三木康夫

以上、「調査が予測を外す理由」を筆者の経験に基づき整理したつもりです。
調査システムの問題と属人的な問題が、新製品開発プロセスの後期になるほど多くなっていることを、特に理解して頂きたいと思います。

新製品開発・発売の成功確率を高めるために必要なことは

新製品開発を含んだすべてのマーケティング活動に携わるマーケターにとって、調査は説明責任の道具であることを認識して頂く必要があります。正確なROIはわからなくても、ROIを高めるものだ、という認識を持って頂くことが重要です。
そのために:

  • 新製品開発システムとそれを支援する調査システムを理解して頂く/クライアントの社内に確立する/調査会社から提案する…新製品開発のステージゲートの理解が重要
  • 新製品開発のマネジメントシステムを作り、維持、発展させていくマネジメントのリーダーシップ
  • ブランドマネージャーと社内・社外のリサーチャーのコミュニケーション
  • リサーチャーサイドの努力:ベンチマークやアクションスタンダードがわかりやすいように、調査デザインの統一化・教育を行う

新製品開発プロセスに関しては、この回で終了とします。

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