何故、消費者行動の理解が必要なのか?

企業のマーケティング活動の成否を左右するのは消費者の購買であり、効果的なマーケティング活動を計画・実施するためには、消費者の心理や購買行動を理解することが不可欠です。購買行動にはブランド選択などの消費者の意思決定過程が含まれ、意思決定の結果とそれに影響を及ぼすマーケティング活動の関係を捉えることができます。従って、マーケティング・リサーチ(以下MR)においても、消費者行動を理解するということは、MRの定義である

  1. (市場や消費者行動の実態を明らかにし)マーケティング上の機会と解決すべき問題を定義づけする
  2. マーケティング活動(4Pに代表される様々な代替案)を創出し、洗練し、評価する
  3. マーケティング活動の成果を評価する(次の活動サイクルの出発点)

の各ステージにおける調査プロジェクトの企画・分析において必要不可欠なことなのです。

(注)この稿は、主に次の書籍とJMRAでの私のセミナー「マーケティングとマーケティング・リサーチセミナー:消費者意識・消費者行動」のノートを参考にしています。
守口剛、竹村和久 編著(2012年)「消費者行動論」八千代出版
M.R.ソロモン、松井剛監訳(2015年)「消費者行動論、上中下」丸善出版
田中洋 著(2008年)「消費者行動論」中央経済社
青木、新倉、佐々木、松下、著(2012年)「消費者行動論」有斐閣

消費者の意思決定過程のモデル化

消費者行動の概念モデルには多くの種類がありますが、その代表的なものとしてBMEモデル(図表1)を取り上げます。このモデルでは消費者が外部からの(マーケティング諸活動の)刺激に始まり、情報処理のプロセスを経て(図の左側)、購買・消費・評価に至る購買決定・消費プロセス(図の中央)とそれらに与える生活環境や個人の意識や態度などの要因群(図の右側)で消費者行動全体のプロセスを説明しています。

もう少し具体的に説明しますと、「情報処理プロセス」(図の左側)においては、消費者は外部から商品や広告や口コミなどの刺激に「接触」し、その内「注意」を引かれたものについて「理解」、「受容」、「保持」し、その刺激について、これまでに経験した記憶を参照して、どのように反応したら良いのかを決めます。

図の中央の「購買決定・消費プロセス」においては、外部の刺激から消費者が何らかの問題(ニーズ)を認識することからスタートし、その後消費者が記憶している内部情報と(新たな)外部情報が探索され、代替案(購入しようと思う商品の候補)の評価がなされます。さらに代替案の中から特定の商品・サービスが選択・購買・消費されます。消費の結果は消費後評価として記憶され、次回以降の購買時における代替案評価にフィードバックされます。

消費者の意思決定過程の概念モデル

購買決定・消費プロセス・・・問題(ニーズ)の認識

以下、購買決定・消費プロセスを順を追って説明していきます。

購買決定・消費プロセスは消費者がニーズを認識してスタートします。ニーズは消費者の内部からの刺激(たとえば空腹である)、あるいは外部からの刺激(たとえばCM、友人が新車を購入した)が閾値に達すると動因になります。ニーズを認識するということは、消費者が知覚している現在の状態と、目標とする(望ましい)状態とのギャップの大きさを認識することです。購買決定プロセスは現在の状態から目標とする状態とのギャップを商品・サービスの購入によって解消しようとする過程ということができます。つまりは問題解決を図っているのです。

ニーズを引き起こすマーケティング戦術は、「現在の状態と目標とする状態のギャップを大きくすれば良い」、ということになります。そのためには

  1. 目標とする状態のレベルを上げる
  2. 現在の状態のレベルを下げる
  3. 1と2が同時に起きる

ということを目指せば良いことになります。MRでは「目標とする状態」、「現在の状態」の知覚レベルに影響を与える要因を把握すれば良いということです。

問題(ニーズ)認識

動機付け

動機付けは人々を行動に駆り立てるプロセスを意味します。問題を認識し、ニーズ、ウォンツに気づくだけでは購買行動を起こすには不十分です。満たされない状態がある一定レベルに達すると動機が働き行動を起こします。動機とは満たされていない状態を改善しようとして、実際に行動を起こすレベルにまで高められたニーズのことです。そして望まれる最終的な状態が消費者にとっての目標(Goal)となります。目標は中心目標、下位目標、上位目標の3つの階層に分けることができます。

たとえば、「減量する」という(中心)目標の上位目標(上位概念)は「自分に自信を持ちたい」、下位目標は「エクササイズをする」となります。動機の分析には投影法やラダリングなどの定性調査の手法が適しています。

また、基本的な購買・使用動機は問題解消型動機と報酬型動機に分けることができます。前者は負の状態から正常な状態へ戻すことが動機になる場合(たとえば問題除去であれば、空腹を満たす、歯槽膿漏を直すなど)、後者は正常な状態から一層良い状態へ上げる(ステータスのある車に乗り換える)ような場合です。

コンセプト評価で問題解消型と報酬型のコンセプトが混在して調査にかかることがありますが、報酬型のコンセプトのほうが良い評価を取ることが多いようです(コマーシャルの表現においても同様です)。トマトジュースも一昔前は、不健康な人が飲むことで、普通の状態に戻る(問題解消型)様なイメージでしたが、製品改良が進み、味がよくなってからは、健康増進のイメージ(報酬型)になり、メーカーのイメージも一新されたと、筆者は感じています。

動機付け(Motivation Process)

ニーズは変化し続ける・・・マズローの欲求(ニーズ)階層理論

マズローの階層の基本的理解は、人間はより低次元のニーズが満たされるにつれ、より高次元のニーズに重点を移す、ということです。生きるための生理的ニーズから自己を高める心理的ニーズへと欲求のレベルを高め続けるのです。消費者はそのときの自分に何ができるかによって製品・サービスの特性の異なる部分に価値を置くようになります。ただし人間がある行為をとるとき、それを裏付けるニーズはそのとき心を支配している唯一の欲求だけでなくいくつかの欲求が混合された結果としてその行為をコントロールしているのです。つまりいくつかのニーズの相対的重要性の程度によって行為の方向と強さが決定されるのです。

中元・歳暮などの贈答品を例にとると、取引先に贈る場合は2.安全ニーズが、親や世話になっている人には3.社会的ニーズが、親しい友人には4.自己尊重ニーズ(高い評価を得たい、趣味がいいと思われたい)が支配的なニーズになっていると考えられます。

またクレジットカードを例にとると、製品ライフサイクルの初期の段階では「出かけるときは忘れずに=Amex(American Express)」、「ビザさえあれば=Visa」(安全ニーズ)ですが、最近では、「Priceless お金で買えない価値がある=MasterCard」(自己実現ニーズ)にまでなっています。また「その特別が日常になる=Amex Gold」(自己尊重ニーズ)と「心強いから、心地よい=Amex Card」(社会的ニーズ)といったスローガンの違いも納得できます。

マズローの欲求(ニーズ)階層モデル

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