ミステリーショッピング調査

ミステリーショッピング調査(MSR)の目的

ESOMAR(ヨーロッパ世論・市場調査協会)の「ミステリーショッピングスタディのガイドライン、2005年改訂版」では、MSRの目的を次のように定義しています。
「ミステリーショッピングスタディはカスタマーサービスに焦点を当てた業務改善を目指して実施される。サービスがどのように提供されているか、あるいは業務がどのように運営されているか、その現状について情報を収集することが目的である。」

ガイドラインの全文は以下を参照ください。ESOMARの原文とJMRAによる和訳です。
https://www.jmra-net.or.jp/rule/pdf/guideline/2013-0405-o.pdf(ESOMARの原文)
https://www.jmra-net.or.jp/rule/pdf/guideline/2013-0405-t.pdf(JMRAによる和訳)

なお、英国の MRS ( Market Research Society= 英国市場調査協会)はより詳細な MSR のガイドラインを公表しています。(2014年の改訂版)
https://www.mrs.org.uk/pdf/2014-09-01 Mystery Shopping Research Guidelines.pdf

本稿はこれらのガイドライン及び筆者の経験に基づいて記述します。

MSRの目的をより具体的に(マーケティング的に)述べると次のようになると思います。「組織=クライアントが顧客に提供する販売活動やサービスのプロセスの実態や水準を評価し、販売活動・サービスに関わる従業員の教育計画を立案したり、サービスの向上を図るためのマネジメント情報を提供し、その結果、顧客の満足度を向上させ、顧客の支持・ロイヤルティを高めることを目的とする」。サービスの達成度はクライアントが定めた目標値(KPI)と比較することにより、また競合他社の提供するサービスの水準と比較することにより測られます。

ミステリーショッピングの概要

MSRは、顧客へ提供される販売活動やサービス提供の実態・プロセスを観察し評価するために特別の訓練を受けたミステリーショッパー(覆面調査員)によって実施されます。ミステリーショッパーは顧客や見込み客を装い、実際の顧客が現場で受けるであろう顧客経験(タッチポイント=案内のわかりやすさ、施設の清潔さ、待ち時間、応答時間、商品に関する情報の提供、クライアントの規定・マニュアルの遵守度、担当者の知識・態度など)をあらかじめ用意されたシナリオ(=タスク:簡単なものから、込み入ったものまで)に沿って一連のテストを行い、要求された情報を収集します。同様の調査方法をクライアント自身のサービスの品質を評価する基準を得るために競合他社を対象に行うこともあります。客観的に販売活動・サービスのプロセスの評価ができるように、訪問の現場には毎回異なったミステリーショッパーが訪問します。

MSRの対象組織とアプローチの方法

MSRは主に次の組織を対象として行われます。

  • クライアント自身の組織
  • クライアントが利用している組織(クライアントのエージェントや正規の販売業者など)
  • クライアントの競合組織

実査方法のバリエーションは

  • ミステリー観察
  • ミステリー訪問
  • ミステリーコール(電話)
  • ミステリーメール(郵送)&ファックス
  • ミステリーe-mail&Website訪問

ミステリーショッパーはクライアントがターゲットと考える人達、即ちクライアントの潜在顧客であることが重要です。ミステリーショッパーはクライアントの顧客として適切な服装をし、商品を買いそうな人、つまり「典型的な」クライアントの商品・サービスのショッパーでなくてはなりません。

また、ミステリーショッパーは「調査対象店の商圏」でリクルートすることが望まれます(優秀な対象者ほど、ミステリーショッパーのニーズや住所を質問したり、電話でフォローしたりします)。

MSRで用いられる調査票(記録用紙)は顧客目線に基づいた、企業と顧客の接点を網羅した設計が求められます。

顧客満足度調査(CS)との違い

CS調査で把握する満足度は、顧客が実際に体験したサービスと事前期待との差(ギャップ)です(第19回のコラムを参照ください)。CSにおける評価は顧客の主観に依存しているのでサービスの実態と顧客の理解が異なることがあったり、具体的な問題点がわかりづらいことがあります。MSRは現場におけるサービス品質のレベルを客観的事実に基き、ミステリーショッパーがあらかじめ定められた基準に従って評価します。必要により具体的な評価理由も添えられますので、改善策を立てることが容易になります。

またMSRの情報はある時点でのスナップショットとみなすことができます。評価基準が客観的でかつ一定しているので、時系列的に実際の顧客体験として正確な情報を提供します。また改善活動の進捗状況を把握する手段としても利用できます。目標管理、KPIの追跡が容易になります。

MSRとマーケティング・リサーチとの違い。特に倫理面

MSRが他の調査と大きく違うところは、調査員(ここではミステリーショッパー)はその存在を明らかにせず、かつデータ提供者(対象者)は評価の時点では調査に関わっていることを認識していないことです(一般の調査では全く逆になります)。もしデータ提供者がそのことを認識していたとすればMSRは成立しないことになります。

MSRはデータ提供者の権利について専門的かつ適切な防護(セーフガード)体制がとられた中で実施されなければなりません。MSRを実施する際、リサーチャーは個人のプライバシーを尊重し、データ提供者がMSRによって不利益や損害を被ることがないよう細心の注意が必要です。一般の調査以上にリサーチャーの倫理が厳しく問われます。図表1はESOMARのガイドラインに示されている要求事項のうちリサーチャーの倫理性に関わる部分の抜粋です。

ESOMARの要求事項【要旨・特に倫理的側面】

またリサーチャーはミステリーショッパーの防護にも注意を払う必要があります。MSRで使われるシナリオ(タスク)はどんなものでも安全なものでなくてはなりません。ミステリーショッパーは法的に問題になることを強いられてはならないし、身体的なリスクや個人的な理由(地域性、能力、性別、民族性など)で安全が脅かされることがあってはなりません。MSRに関わったことによっていかなる不利益や悪影響も一切及ぶことのないように、十分な配慮が求められます。

MRとみなされるMSRとみなされないものの区別

一般的な意味でのミステリーショッピング調査には二つの異なったタイプがあります。第一のタイプではデータ提供者(対象者)の匿名性が保護され、集められた個人情報は完全に守られ、調査目的以外に使用されることはないものです。このような場合それはミステリーショッピング調査と定義付けすることができます。

第二のタイプはこうした匿名性はなく、個々のデータ提供者用に使用されるタイプです。たとえばスタッフのトレーニング用だったり、販売活動を補強するためのものであったり、ボーナスなどの評価の仕組みなどに使用される可能性のある場合にはその「調査」はマーケットリサーチの範疇には入りません。

二つのミステリーショッピング スタディ

以上で「ステークホルダー満足度調査」の項は終了です。

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