パッケージの開発と調査

パッケージはコミュニケーション

コンセプトが決まれば、次はネーミング、パッケージの開発です。ネーミングやパッケージは製品そのものの実力とは直接関係ないように思えますが決してそうではありません。ブランド名やパッケージデザインを通じて消費者はある期待やイメージを持ち、商品を購買し、実際に使用して商品のベネフィットをより強く感じたり、逆に物足りなさを感じたりするのです。新製品の商品としての魅力(商品に詰まった価値)を高めるのに、ひいてはブランドのエクイティを高めていく上で、商品名、パッケージは非常に重要です。

パッケージ(デザイン)の役割は図にあるように多岐に渡りますが、パッケージ開発で一番重要なことは、「パッケージはコミュニケーションである」という理解です。

パッケージにはネーミング、ロゴマーク、スローガン、色などのブランドの基本シンボルの要素が集約されており、消費者との接点も購入時、使用時、廃棄時と、頻度も高く時間も長いわけですから、パッケージデザインは非常に重要です。パッケージのデザイニングから消費者に対するコミュニケーションのクリエイティブ・ワークがスタートします。パッケージはIMC(統合型マーケティングコミュニケーション)の起点であり、終点でもあるわけで、他のメディアとのシナジーが大事です。良いパッケージはそれ自体が優秀なSilent messengerなのです。

パッケージ(デザイン)の役割を理解する

では、パッケージは具体的にはどのようなことを消費者に伝えようとしているのでしょうか?以下にパッケージが伝達でき得ることを3つの要素にまとめました。ただし1つのパッケージが3つの要素のすべてを一度に伝えることができるのではなく、製品のライフサイクルや競合関係により、どの要素が強調されるか、あるいはどの要素を組み合わせるかで違ってきます。

パッケージがコミュニケートする3つの要素

望ましいパッケージのチェックポイントを整理すると次のとおりです。パッケージテストのテストデザインや調査票では、これらに対する回答が出るように設計すればよいのです。 これらはとりも直さず、ブランドマネージャーが望んでいることです。

  • 容易にその銘柄を見分けることができるか(その銘柄は目立つか、容易に識別されるか)?
  • (カテゴリー、ブランドとして)“らしさ”があるか?(“らしさ”がないと消費者の選択集合からはずれてしまいます)
  • アイデンティティ=他社がまねできない独自性(ブランドエクイティとして強いもの)があるか?
  • 製品・銘柄にとって望ましく意図したコミュニケーションが出来ているか?(パッケージ制作者にブリーフィングした要件が備わっているか?)・・・ブリーフィングの内容はコンセプトに沿っていなければなりません
  • 消費者(ターゲット)が実際に製品を使う場合の諸機能を備えているか?
  • 消費者(ターゲット)の好意を得ているか?

好意度はチェックポイントの最後に持ってきました。その理由は、新製品開発の究極の目的は強いブランドを創ることにあるのですから、好感度よりも意図したコンセプトが消費者に伝わっているかのほうが重要であると考えるからです。もちろん好意度も重要ですが、好意度をパッケージ選択の基準の第一においてはいけません。好意度の高さも求めるならデザインを初めからやり直すべきです。

パッケージデザインの変更・リニューアル時の調査デザインでは、次のような注意が必要になります。実務の上ではこの目的のテストがかなり頻繁にあります。

  • パッケージを変えるにしても、デザインの意匠・アイコンやフォーマットの一貫性が消費者(特にロイヤルユーザー)を引き留めるカギとなります。特に歴史が長く強いブランド(たとえばネスカフェ、ブルガリアヨーグルト、味ぽんなど)のパッケージ・リニューアルには、パッケージの意匠に明確な連続性があることが大事です。パッケージを変えたいのなら、何回かのパッケージのリニューアルを繰り返して少しずつ変えていくようにすべきです。
  • 実際の調査では、対象者(特にヘビーユーザー)に無暗示で現行のパッケージの絵を描いて頂き、どのような要素が消費者の記憶に強く残っているかをチェックし、その構成アイデンティティ(ロゴ、色、形やそれらの組み合わせ)を新パッケージにも残すようにします。多くの製品カテゴリーにおいて、20%のロイヤルユーザーが全消費量の80%を消費するといわれています(20-80の法則、パレートの法則)。ロイヤルユーザーの重要性を認識する必要があります。ロイヤルユーザーにとっては、買物時に「瞬時にそれと分かること、見つけやすさ」がキーなのです。メーカーサイドからすれば、ロイヤルユーザーに他の商品に目を向けさせない、ということです。

パッケージデザインの連続性が途切れてもよいのは製品ライフサイクルが衰退期に入ったときだけと考えていただきたいと思います。

パッケージテストの調査デザインでは次のことを強く推奨します。

  • モナディック設計(テストパッケージ同士を直接比較しない)。複数テストパッケージがある場合はそれぞれ別セルで
  • 競合条件(実際に売られる売り場)を想定した陳列棚を作り、競合が周りにある状態でテストする

消費者が商品を買うとき、パッケージは常に他の商品と一緒に陳列棚に並んでいます。常に競合と比較して評価されているのですからその状況に近いテストデザインを組むことが大事です。競合条件を加味せずに、テストパッケージだけをいくつか並べて調査をすると、上品ではあるが売り場でインパクトの弱いもの(視認性の低いもの)が選ばれがちです。

参考までに、パッケージテストの調査票のフローを示すと図表3のとおりです。

パッケージテスト(定量)の概要

パッケージテストにおける注意点

また、パッケージテストにおける注意点を以下にまとめました。

パッケージテスト: Do’s & Don’ts

ブランドネームの開発と調査

ブランドネームは感性評価も考慮すべき

ブランドネームは思い付きで決めるのではなく、製品コンセプトを総合的に補強するものでなくてはいけません。また名前は一度決めたら変えるのは難しいので慎重に決める必要があります。

ブランドネームの開発および選択の基準で重要なポイントは、総合的な好感度とは別に次の3つに整理できます。

ブランドのポジショニング(コンセプト)との整合性

  • 意図している商品イメージを強化するものであること
  • 製品の特長や使用便益を示唆するものであること
  • ユニークさ、オリジナリティがあること

文字・音として基本的な魅力(感性評価)

  • 記憶しやすいこと
  • 発音しやすいこと(口に出して言いやすいこと)・聞きやすいこと
  • 読みやすいこと

ネガティブな要素がないこと

  • (特に国外で使う場合)不都合な連想を伴うものでないこと
  • 自社の他の商品の名前との間に関係(ポートフォリオ)上矛盾のないこと
  • 類似商品と混同するものでないこと
  • 他企業がすでに登録したものでないこと
望ましいブランドネームとは・・・

新製品のブランドネームを1つに絞り切れない場合、当該商品のターゲットを対象として、上記項目をカバーする、次のようなテストが行われます。

記憶テスト:当該商品のカテゴリーを対象者には教えずに、候補ネーミングにダミーのネーミングも含めて、15~20位の名前を用意します。これらを対象者に1~2回、順次提示した後、記憶しているものをすべて答えてもらいます。このとき同時に音声を使うこともお勧めです。
このようなテストをするのは、多くの人に少ない接触頻度で、正しく記憶してもらえるのが良いネーミングであるという前提からです。

連想テスト:次に候補のネーミングから連想されることを自由に答えてもらいます。
連想テストには2つのステップがあり、最初に当該商品の製品カテゴリーは知らせずに、どのような製品カテゴリーであるか、どのような特長を持った商品であるかを質問します。次に製品カテゴリーを開示して、どのような特長を持った商品であるかを質問します。このようにして連想されたことが当該商品にとって不都合なことはないか、当該商品の強みに関連したものであるか否かなどについて分析します。

商品イメージテスト:テストの後半の部分で当該商品の基本ポジショニングや築き上げようとするイメージ項目に関し、候補のネーミングがどの程度フィットしているかをテストします。

選好テスト:最後に候補のネーミングがどの程度好まれているか、嫌われているかを質問します。

以下にネーミングテストの基本的なフローを示します。

ネーミングテストの概要

以上がネーミングテストのプロセスと評価の考え方ですが、感性評価の側面から見た、ネーミングの評価を紹介したいと思います(多くは下記の本からの引用です)。先ほど紹介したネーミングテストの基本的なフローでは、「口にだして言いやすい、聞きやすい」は、あまり考慮されていないように思います。候補の名前を声に出して読んでもらうことも調査項目として採用すべきかも知れません。

「(人の)名前の発音は漢字やそれが持つ意味とは別に潜在意識に作用します。名前を発音した際に感じる身体感覚は漢字を見て判断するよりも早く、深く意識に届きます。また頻度としても漢字を見るより名前を呼ぶことのほうが多いので名前の持つ発音体感は潜在意識に作用します。」

「年齢によって気持ちよく感じる語感は異なります。赤ちゃんが発音できる言葉はB、M、Pなどの子音を含む言葉です(バーバパパ、ポッキー、マミーポコなど)。また思春期の男の子はGやZといった子音を含む言葉を好むようになります(ガンダムなど)。」

(出所:小川亮(2010)「図解でわかるパッケージデザインマーケティング」 日本能率協会マネジメントセンター、黒川伊保子(2009).「名前力」 イーステージ出版)

このような感性評価からの知見も取り入れて、‘商品名はブランドパーソナリティを感性的に表現しているか?’、‘商品名とキャッチコピーの親和性はあるか?’といった側面も考慮に入れたネーミングの開発と選択のための調査デザインが望まれます。

製品テスト

製品コンセプトが決まれば次にコンセプトに対応した製品の開発・改良を進めます。新製品開発プロセスにおける製品テストの目的は:

  • 開発を進めてきた製品が、パフォーマンスの上で競合製品より、あるいは開発目標値よりターゲットの間で優位にあるか?
  • 設計どおり(製品コンセプトに沿った)の製品特性がターゲットに知覚されているか?

をチェックするものとなります。

製品開発においてはコンセプト(ベネフィット、ターゲット、ポジショニング=使用機会・シーン)との整合性が総合評価とともに重要です。新製品のシーズが先にある場合でも、コンセプトに合わせた製品の調整が必要です。カテゴリーとして同じ野菜ジュースでも、ベネフィットにより、ターゲットにより、そして使用シーンにより様々な製品バリエーションが考えられます。20代の有職女性が朝食時に飲む美容のための野菜ジュースと中高年の男女をターゲットにした健康目的の野菜ジュースでは全く違うものの筈です。

製品テストのデザイン

製品テストの一般的なアプローチは:

  • テストする場所が対象者宅(HUT)か特定会場(CLT)か?
  • テスト製品の状態が銘柄明示(ブランデッドテスト)の状態か銘柄非明示(ブラインドテスト)の状態か?
  • 1対象者あたりのテスト製品の割当が1種類(モナディックテスト)か2種類(以上)か?2種類の場合さらにペアド・コンパリソンテスト(直接比較)かあるいはサクセッシブ・モナディックテスト(A製品を評価した後、B製品を評価、最後にA・Bの比較)か?

の組み合わせになります。それぞれの調査手法の特徴を比較すると以下のように整理できます。製品テストはこれらの手法を組み合わせて、調査課題を解決するための最適なデザインを設計することになります。

HUTとCLT

新製品開発のプロセスにおいては、CLTは基本的に製品改良のために行い、消費者の受容性を確認するためのテストは(銘柄非明示で)HUTで行うというのが一般的であると思います。
図表7にHUTとCLTの比較を実生活との密着度・乖離度がどの程度であるかという視点で試みています。

CLTの強みを整理すると次のとおりです(食品や飲料の場合)。

  • すべての対象者に対し(同じ会場内では)テスト条件を同じにコントロールできるので(サーブする什器、量、温度、室温など)質的に均一なデータが得られる
  • 調査員のインタビュー法を一定程度コントロールできる。特に自由回答のプロービングなど
  • テストの場面を観察できる
  • 一般的にHUTより調査期間が短く、調査費用も安くなる

一方、HUTの強み(CLTの弱み)は次のとおりです。

  • テスト期間中何度か(も)試食・試飲できるので、また色々な方法で試せるので総合した安定化した評価が得られる(製品テストで常に問題になる、「飽き」「くせになる」を見極められる可能性がある)
  • 使う什器、量、温度、状況など実生活に近い状況でテストできる。消費者はテスト品を指示通りに使用してくれるとは限りません。ある程度指示からはずれて使用されても競合に勝てる製品を設計する必要がある
  • 食品などは調理する人の評価と食べる人の評価が必要なときがある

CLTでは普段のように使用できない製品の場合は向いていません。自分で調理してから食べる食品や調味料などです。洗濯用洗剤などは実際に使ってみないと総合評価はわかりません。シャンプー・コンディショナーなどは使用中、タオルドライのとき、ドライヤーで髪を乾かすとき、あくる日の整髪のときの髪のまとまり具合など様々な評価ポイントを経験して製品の総合評価がなされます。

食べる量による評価の違い・・・飲料や菓子など味の濃さの違う製品の評価はCLTとHUTでは評価が違ってくる可能性があります。たとえばスナック菓子のような製品の場合、普段の生活においては1袋食べてしまう製品でもCLTでは少量しか試しません。この場合、味が濃い・しっかりしたものの評価が高くなる傾向があると推測されます。

HUT vs. CLT(1)
HUT vs. CLT(2)

Paired Comparison(PC)、Monadic(Mo)、Successive Monadic(SM) Testの比較

次に図表9に3つのテストの特徴をまとめました。
新製品の開発プロセスにおいては、筆者はモナディックテストを推奨します。その理由をあげると次のとおりです。

  • PCもSMも製品評価をローテーションで処理(P⇒Q、Q⇒Pの合計)しようとしてもオーダー効果(バイアス)を完全に消すことはできません。味のはっきりしているほうが有利になります。オーダー効果とは先に試した製品はより鮮明に感じるので、先に試した製品の評価が高くなることを言います。オーダー効果は同じ製品をPCあるいはSMで試すことで検証できます(同じ製品でも先に試したテスト品の評価が高くなります)。
  • SMの先に試したほうの製品の評価とMoの評価を比較することはできません。同じ製品の評価でもSMの評価の方が低くなる⇒隣接効果といいます(SMの場合、後から試す製品の評価が高いと困るので、先に試す製品の評価を抑え目にしがちです)。
  • PCやSMではノームを作ることができない(SMの最初の製品の評価同士は比べることが可能だが、上記のとおりMoの評価と一緒にすることはできません)。Moでは問題なくテスト間の比較ができます。
  • PCやSMでは競合品との優劣はつくが、どのように改良すべきかの方向性は必ずしも正しいとは限らない(競合品と似てくる)。
  • PCやSMでは味のポジショニングマップや全体評価との重回帰分析(全体評価に影響を与えるドライバーの抽出)が正しくは行えない。
  • フレーバーが少しでも違えばPC、SMは使えない。Moはレモン、グレープフルーツの評価(全体評価など)を比較することができる。

一方Moの弱みは:

  • Moはデモグラフィック特性以外でテストセル間の標本構成を合わせるのが難しい。製品評価に影響を与えると思われるヘビーユーザーの割合やブランドユーザーの割合のセルマッチは大変。PC、SMはこの問題から逃げられる。
Paired Comparison、Monadic、Successive Monadic

製品テストにおける評価スケール

製品テストでの問題点

製品の開発・評価レベルにおける陥りやすい“落とし穴”をまとめると次のとおりです。

「製品の開発・評価のレベル」での落とし穴

次のチャレンジ

今後、健康食品や健康・栄養飲料の製品テストが増えてくると予想されます。製品の開発目標は従来の製品テストの多くがそうであったように単なる「おいしさ=全体評価=好き・嫌い」ではなくなってくると思われます。開発目標は「効果感とおいしさのバランス」だと思うのですが、そのようなことを意味する総合指標を考えなければいけません。またこのような製品だと銘柄非明示のテストでも最低限の製品説明(コンセプトではない)や製品カテゴリーの説明が必要になってきます。それをカテゴリー横断的にどの程度のレベルにするか、悩ましいところです。生理的な領域だけでなく心理学的領域(状況、気分、見た目などで実感するおいしさ、頭で考えるおいしさ)もカバーする調査項目や分析法の開発が求められます。

構造方程式を利用する

先にシャンプー・コンディショナーの例を挙げましたが、製品評価は物性的なもの(泡立ちがよい、泡ぎれがよい、液体の粘度がよい、など)と、感性的なもの(髪を洗う時の香りがよい、タオルドライの時の香りがよい、あくる日よい香りが残る、髪がよくまとまる)あるいはイメージ的なものなどが混在したものになります。上述の健康・栄養飲料食のようなものも同じような評価構造になるのかも知れません。この問題を解決する手段として構造方程式(SEM)を使うことが考えられます。製品属性を下位概念、感性的なものを上位概念とするネットワークで評価構造やドライバーを見出すことができるのではないかと考えています。

次回はミックステスト、広告開発調査、発売後のトラッキング調査をカバーする予定です。

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