第1回

デバイスフリー時代の新しい調査設計(1)

「Mixed-Mode Research (スマホ・PC併用調査)」について

デバイスフリー時代の新しい調査設計(1)執筆 : 植村 史明

※本テーマのコラムを全2回に渡ってお送りいたします。

リサーチ業界をとりまく環境の変化と課題

昨今、スマホの保有が増え、PC(パソコン)の保有が減る傾向がみられます。総務省の発表によると、この傾向は2010年より始まっており、以来7年以上にわたり続いています。
弊社アンケ-ト・モニターにおいても、スマホ端末からアンケートを回答する傾向は特に2014年12月以降急速に高まり、今や20代男性の約5割、20代女性の7割以上にのぼります(2016年10月弊社調べ)。 もはや、調査業界においてもスマホ端末からの回答を受け入れざるをえないのが現実です。
こうした環境の変化の下、現在の調査設計は、「PC端末からの回答を想定した設計」と、「スマホ端末からの回答に制限した設計(スマホ調査)」の2つが主流となっています。しかしながら、両者とも環境の変化に対応した最適な調査設計であるとは言えません。

前者については、スマホ端末からの回答を想定しておらず回答画面がスマホ用に最適化されていないため、下記の問題を抱えています。

  1. スマホ端末からの回答品質が低下する恐れがあること
    • スマホ端末からの回答は、PC端末からの回答に比べて、「一覧性」が低くなりがちで特定の選択肢への回答が集まる可能性があること
    • スマホ用に最適化されていない質問に回答しなくてはならないことから回答負荷が大きくなること
    • 結果として回答時間が長くなりがちであること (PC端末からの回答時間の1.5倍)
  2. スマホ端末からの回答負荷の大きい調査を続けていくと、スマホ端末からの調査協力率の低下を促進し、将来的には特に若年層から一定の回答数を確保することが困難になる恐れがあること
  3. 各回答端末に最適化された設計ではないため、現状のままでは回答する端末により回答結果に差が出る恐れがあること (誤ったデ-タ解釈をする恐れがあること)

またこの「PC端末からの回答を想定した設計」には、過去の調査設計との継続性という観点から、一部ではPC端末からの回答だけに制限して調査を実施するといった方法がとられています。しかしながら、スマホ端末からの回答者が増加しているという現状を考えると、調査対象者からスマホ端末からの回答者を除外することはサンプルが偏る恐れがあり、決して適切な方法であるとは言えません。

一方、後者の「スマホ端末からの回答に制限した調査設計」も下記の問題を抱えており、現状では最適な調査設計であるとは言えません。

  1. 若年層の回答は収集しやすくなるものの、40代以上の層の回答が集めづらくなり、サンプルが偏る恐れがあること
  2. 予め質問数を5~20問に制限して設定している調査設計が多く、必ずしも現状の調査ニーズに合ってなく実用的ではないこと

上記の通り実査環境が変化しているにもかかわらず、適切な対応がとられていないのが現状です。今後もスマホ端末からの回答がますます増加していくという状況の中、我々リサーチャーは「PC端末からの回答とスマホ端末からの回答の違い」を理解し受け入れ、こうした変化に対応した最適な調査設計を提案していくことが求められます。

PC端末からの回答とスマホ端末からの回答の違いについて

PC端末からの回答とスマホ端末からの回答に違いがあるとしたら、その違いはどこから出てくるものでしょうか? 両者の回答の違いは、「標本枠効果 (sample frame effect)」と「端末効果 (mode effect)」の2つの効果によるものであり、両者の回答の違いはこの2つの効果を掛け合わせた結果として生じます。

PC回答とスマホ回答の違い

1.標本枠効果 (Sample frame effect)

1つ目は、PC端末から回答する人とスマホ端末から回答する人の、「人の特性の違い」により、回答に違いが生じる場合です。これを「標本枠効果 (sample frame effect)」と呼びます。
標本枠効果を確認するために、弊社にて実験調査を行いました。対象者の半数はPC端末から回答してもらい、残り半数はスマホ端末から回答してもらって(性別と年齢別構成比は均等割付)、回答結果に違いがあるかどうかを検証しました。質問項目については、情報感度に関する質問と「カフェ」の認知・利用状況及び店舗へのイメージについて質問しました。また回答する端末による違いがあるかどうかを見るために、質問文および選択肢は端末に関係なく、共通としました。実験調査の結果は、スマホ端末から回答する人の方が、PC端末から回答する人に比べて、情報感度が高いという結果でした。

標本枠効果(Sample grame effect)

また、「カフェ」については、スマホ端末からの回答者の方が、認知店舗数及び利用経験店舗数が多く、店舗に対してもより多様なイメージを持っていることから、スマホ端末からの回答者の方がPC端末からの回答者に比べ、「カフェ」に対する知識やこだわりも強いという結果が見られました。

2.端末効果 (Mode effect)

2つ目は、同じ属性の回答者であっても、回答端末の違い(端末の大きさ、端末の画面からの見え方の違い)により、回答結果に違いが生じる場合です。これを「端末効果 (mode effect)」と呼びます。
端末効果の確認にあたっても、実験調査を行いました。対象者は通常スマホ端末から調査へ回答している人を対象とし、半数の対象者には本調査は敢えてPC端末から回答してもらい、残り半数は通常通り本調査もスマホ端末から回答してもらって、回答結果の違いの有無を検証しました。質問項目については、広告静止画像と広告動画について評価してもらいました。回答する端末による違いがあるかどうかを見るために、質問文及び選択肢は端末に関係なく、共通としました。
実験調査は、静止画像及び動画ともに、インパクトに関連する項目(迫力がある、躍動感がある等)は、回答画面の大きいPC端末からの回答の方がスマホ端末からの回答よりもスコアが高いという結果でした。また広告の中のメッセージの想起率についても、回答画面の大きいPC端末からの回答の方が高いという結果でした。つまり同じ属性の人であっても回答する端末が異なると回答結果が異なることがあることが確認されました。しかしながら、興味度や利用意向については、必ずしもスマホ端末からの回答のスコアがPC端末からの回答のスコアよりも低くなるという結果ではありませんでした。

上記の結果はあくまで一例であり、端末効果を考える上で留意する点は以下の通りです。

  • 画面が小さいからといってスマホ端末からの回答が、常に静止画像・動画の評価にマイナスの影響を及ぼす訳ではない
  • 製品カテゴリ-や広告のコンテンツによっては、端末効果がみられない場合がある (消費財と耐久財の場合、あるいは情緒的なアプロ-チの広告と機能的なアプロ-チの広告の場合など)
  • 標本枠効果に端末効果も掛け合わせると、標本枠効果だけによる結果と比べて、違いが無くなったり、あるいは結果が逆転するといった場合も考えられる

Mixed-Mode Researchのご提案

前述の標本枠効果及び端末効果があることを考えると、今後調査設計を行うにあたって、以下の2点を考慮する必要性があると考えます。

  1. 標本枠効果があることを考えると、対象者の網羅性という観点から、サンプルが偏らないようにするためにも、いずれの端末からも回答出来るように設計する
  2. 端末効果を最小限にとどめるためにも、いずれの端末から回答されても誤解や回答負荷を抑えて回答出来るように設計する

この意味において、弊社では最適な調査設計のあり方として、「Mixed-Mode Research* (スマホ・PC併用調査)」を推奨しています。
(*出所 「The handbook of mobile market research」Wiley by Ray Poynter他(2014))

Mixed-Mode Research(スマホ・PC併用調査)を実現するために必要なものは2つ挙げられます。

  1. アンケートシステムがスマホ対応していること
  2. 画面設計も、PC画面を意識するのではなく、より小さい画面のスマホ画面を意識した画面設計を行い、同じ画面をPC画面にも適用すること (スマホの画面とPC画面の差をなくす)

2000年頃のインターネット調査の登場は、これまでのオフライン調査の対象者の考え方、調査設計のあり方に対して問題提議し、「大きな波」を引き起こしました。それから十数年経った現在、我々は「第二の波」を迎え、対象者及び調査設計について再び考えなくてはならない時期に直面しています。

次回は、弊社で作成した「Mixed-mode researchガイドライン」の中から、調査画面の設計の考え方、スマホ回答とPC回答の集計・分析の考え方について触れたいと思います。

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