第3回

マーケティング・リサーチにおける「尺度」と「等間隔性」について

マーケティング・リサーチにおける「尺度」と「等間隔性」について執筆 : 田中 庸介

測定対象を測る4つの本源尺度

「尺度」とは、ある物事の一定の性質を数値化して評価・判断を行う際の規準になるものです。Stanley Smith Stevens (1946)の "On the theory of scales of measurement"(測定尺度の理論)に基づく分類が一般的で主に図表1のように分類されます。高い水準はより低い水準の性質を含み、高い水準でのデータを低い水準に変換して扱うことができます。

調査対象者を測る4つの尺度

消費者が商品やブランド、企業のマーケティング活動(コミュニケーションやメッセージなど)に対して、心理的な反応を示し、ある程度の期間持続する“心のありよう”を指す「態度」という概念がありますが(態度に関しては第22回コラム 参照)、このような数量化しにくいものを評価する方法として「評定尺度法」というものがあります(これは評定法のひとつで、他にも一対比較法などがあります)。マーケティング・リサーチにおいては慣例的に「評定尺度」(図表2参照)によって得られた評価データを「間隔尺度」として分析されることが多く、「等間隔性」が保証されているか否かが重要になります。

例えば、5件法のように「1.非常にあてはまる」を「5点」、「5.まったくあてはまらない」を1点というように得点換算し総和をとって尺度得点することがあります。こうすることで算術平均を算出することが可能になるほか、因子分析などの多変量解析を行うことができるようになります。

ここでの前提は各選択カテゴリーが等間隔であるということです。「順序尺度」は1位、2位、3位と序列は明確ですが、1位と2位の評価の間にどの程度の間隔があるのかは不問であり、評価に使う尺度の等間隔性が成り立っていない場合、つまり、“順序水準以下”であれば「間隔尺度」などの量的データをベースにした多変量解析に疑問が生じるということになります。ただ、等間隔でない場合でも経験的には大きな問題はないとされ分析されていることが多いのも事実です。

評定尺度
評定尺度-絶対尺度

推奨尺度

「評定尺度」における「1.非常に」 「2.やや」などの尺度表現間の間隔は、織田揮準氏(1970)の研究(日本語の程度量表現用語に関する研究)が参考になります。この研究では尺度値は対象測定概念(実現の程度、頻度の程度等)や年齢によって異なることが指摘されており、「評定尺度」に用いる言葉によって、調査結果は影響を受けると考えられます。

その影響を少なくするために、等間隔性を保った評定尺度表現(間隔尺度水準)としては、図表3のような「1.非常に」 「2.まあ」 「3.どちらともいえない」 「4.あまり」 「5.まったく」という尺度が推奨されると考えられます。また図表3の右図のような部分等間隔を利用することもあり、その場合はTOP2の間隔とBOTTOM2の間隔が等しいことが望ましいと考えられます。

推奨尺度

一方で、5件法を採用すべきか、7件法を採用すべきかという検討点は、後者のほうがデータのバラツキが大きくなることがあるため、購入意向などのキーとなる質問項目では7件法を採用することが望ましいと考えられます。特に需要予測を行う際のキー変数とする場合は、データのバラツキを考慮して採用することが重要となります。当検討の一助になるものとして図表4を挙げました。これは1週間間隔で行った同一調査対象者に対する再テスト(計2回の判断)との相関係数を測定した再現性スコアです。5件法 >7件法 >9件法となっており、評価段階が多いほうがよいという訳ではないということです。なお、7件法で消費者から評価を得ることは回答の負担のかけ過ぎという意見もあるため、すべての調査項目で7件法を採用するということは避けた方がよいと考えます。

尺度段階

購入意向に関する尺度

購入意向などの測定で使われる「1.非常に買いたいと思う」 「2.まあ買いたいと思う」という尺度表現の言葉ではTOPボックスのスコアが高くなる傾向があるため、「1.絶対に買う」 「2.多分買う」 「3.買うかもしれないし、買わないかもしれない」 「4.多分買わない」 「5.絶対に買わない」といった尺度表現を使うことがあります。そして「買いたいと思う/購入したい」という曖昧な意向の測定ではなく、厳密に消費者の意向を問う場合は「買う/買わない」という表現が望ましいと考えられます。

測定の対象が消費者の価値観や意識などでは等間隔性を重視し、購入意向や使用意向などの意向を測定する場合はエッジの効いた尺度表現を使い分けることがポイントになります。何を測定するためにどのような尺度表現を使うのか。それは過去の調査結果との比較をする際に“評価のブレ”がないように統一することが推奨されます。消費者の受容性を把握する時に尺度表現を統一し、ノーム値(NORM)として定点観測することで、その受容性(購入意向は製品パフォーマンスの評価に過ぎないため、需要予測モデルでは配荷率などを考慮する)の程度を相対的に把握することができます。

「マーケティング・リサーチにおける倫理」

最後にマーケティング・リサーチにおける倫理に関する抜粋を挙げて、このコラムの終わりとさせていただきます。

『調査を行う者は、調査目的に適い、仮説を検証できるデータを収集するために、適切な尺度を選択する責任がある』
『もし調査担当者に適切な統計手法を見出し活用する専門性がなれば、たとえば統計学者など、外部からの助けを求めるべきであろう』
(「マーケティグ・リサーチの理論と実践-理論編」 ナレシュ・K,マルホトラ(2006)日本マーケティング・リサーチ協会監修,pp.361-362,同友館)

尺度の選定・尺度表現の使い分けなどの共通認識をマーケターもリサーチャーも互いに持っていることが重要です。

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